1,000人のファンがいれば食べていけるは本当か
本質は人数ではなく、単価と継続と直接性という構造という話
クリエイターの経済圏で最も引用される理論のひとつに、『1,000 True Fans(1,000人の真のファン)』があります。2008年にKevin Kellyが書いたものです。あなたの商品を年に100ドル買ってくれる本当のファンが1,000人いれば、年収10万ドルになり、スターにならなくても創作で生きていける。
今回は、この理論が日本のアート作家に当てはまるのかを確かめてみたいと思います。
結論から書きます。理論そのものは日本でも成り立ちます。ただし、1,000という人数を目標にすると、多くの作家にとっては呪いのようなものになってしまいます。理論の核は人数ではなく、単価×継続×直接性という構造の側にあり、逆算すると必要な人数は1,000よりずっと小さくなることが多いからです。私の事業計画の実数で、それを示します。
数字を日本円に翻訳する
原典の前提を日本の作家に置き換えます。年100ドルを年1万5千円とすれば、1,000人で年商1,500万円。これは専業として十分すぎる水準です。少し稼ぎを落として年150万円とする場合、必要なのは年1万5千円×100人。1,000人ではなく100人です。
私自身の年間計画は、後者の規模で組んであります。売上目標150万円の内訳は、3ヶ月講座(98,000円)が12本、ワークブック(約5,000円)が65本。人数にすると、深く買ってくれる人が延べ77人です(登録からの転換率8%、購入者からの転換率15%という計画上の仮定を含む数字です。実測での検証はこれからです)。
比較のために並べます。
私の事業計画を支えてくださるのは、フォロワー1,638人ではなく、その2桁下の77人です。1,000人のファン理論が実務で意味するのは、この層を直接持てるかということだと私は読んでいます。前回のSNS選定の回で見た海外作家たちの収益も、少数の深い支持に支えられる構造という点は共通していました。
数十万人の来場者と、数百人の会員
美術館で働いていたころ、館を実際に支えている人数の少なさに驚いたことがあります。年間の来場者は数万人。けれど講演会を満席にし、寄付の呼びかけに応えてくれて、悪天候の日にも来てくれるのは友の会の数百人でした。
来場者数と支える人数は、桁が3つ違うのに館の運営が本当に頼りにしていたのは、多い方ではなく少ない方のお客様でした。作家の経済も、同じ形をしていると私は考えています。
理論の成立条件は人数ではなく構造
日本のアート作家がつまずきやすいのは3つです。
1つ目は、直接性。
ファンからの支払いが中間業者を通さず作家に届く経路(回路)があること。委託販売の手数料を挟むほど、必要人数は増えます。ギャラリーを挟むと条件によって売値の半額取られるケースもあります。
2つ目は、買えるものの階層。
年1万5千円を1人からいただくには、5千円の入口から数万円の中心まで、価格の階段(条件設計)が必要です。原画1点しか商品がなければ、真のファンにも買い続ける方法がありません。最近では作品をグッズ化して販売する作家も増えてきています。(気軽に購入できるグッズからファンになってもらおうとする試みです)。
3つ目は、継続。
1,000 人の本当のファンは毎年買ってくれる人です。一度きりの購入者を数えると、見かけの人数はすぐ埋まりますが、翌年ゼロから数え直しになります。
つまりこの理論は、フォロワーを増やす話ではなく、少数の人が毎年買い続けられる構造を作る話となります。
判断基準は自分の数字で逆算する
目標人数は、次の3ステップで自分の条件から出せます。
問1: 創作を続けるために必要な年額はいくらか。150万円か、300万円か、500万円か。
問2: 自分の価格で、1人あたり年間いくらの関係が現実的か。5千円と3万円の小品なら、熱心な人で年3万5千円など。
問3: 必要年額÷1人あたり年額が、あなたの必要人数。150万円÷3万5千円なら約43人。300万円なら約86人。
この人数を、いまの読む人の層(メルマガ購読者)と見比べます。私の場合、計画上の77人に対して、数字の上では足りているように見えますが、実際にはまだ検証の途中です。それでも、目指す規模が1,638(フォロワー)ではなく77(購入者)だと分かっているだけで、優先順位は変わってきます。
まとめ
1,000人のファンがいれば食べていけるというのは本当でしょうか。理論では可能です。ただし1,000は年収10万ドル側の数字であり、逆算では、必要なのは多くの場合、2桁の人数です。2桁だったらファンを集められそうだと思いませんか?それにコミュニケーションも深くとれそうな気がします。私なら1000人も覚えきれません。
目標にするのは人数ではなく、少数が毎年買い続けられる構造(直接の回路、価格の階段、継続の理由)です。人数はその結果として付いてくるというのが私の読みです。
必要人数を出したあとに残るのは、その人数とどこで出会うかという問いになります。私の場合はアートメールマガジンがその場所で、火曜日のこの連載では扱わない、届かない原因を特定するためのAI学芸員セルフ診断キットも、そちらでお渡ししています。登録時に、ほかにも数点役にたつプレゼントがまとめて届きます。
良かったら、こちらものぞいてみてください。
前回の記事
フォロワーが増えれば作品は売れる、は本当か
フォロワー数は、作家が最も目にする回数の多い数字です。増えれば前進、減れば後退。そう感じる設計にプラットフォームができています。(だから本来なら気にする必要はありません)。今回は、この数字と販売の関係を、私の実測で確かめます。






わたしも人数を追うより、
続けて選んでもらえる形を作る方に目を向けたいなって思いました!
こんにちわ風茜さん
Kevin Kellyはのこの言葉は有名ですね、僕はこの言葉はオンラインサロンとかwebマーケの分野で見る事が多かったです。(過去に自分の活動を広げる為に勉強していた時期がありました)
固定の1000人の顧客を仮に僕が抱えたとすると年間1000着(月に83.3着)をつくる必要があって、現実的じゃ無いなって思いました。
本当にできて年間50人です。
考えると1000人の20分の1か。 いけそうです。
実際僕の衣装単価が材料費を抜いて平均25~30万なので現実的(年商15000万)なラインです。ただ現在50人もいないのがリアルです。固定と新規顧客が立ち代わり入れ替わりの状態です。
ここを固定にしていく事が僕たち作り手の至上命題ですね。
後、現実的な事を言うとこの50人をこなすのも、衣装一つ仕上げるのに必要な時間を換算していくと休みが一切ない計算になったりするので、そうなると健康上の問題もでてきて、倒れたら一貫の終わり状態。
こういった部分をどう解決していくかというのも頭を巡らせないといけない。
風茜さんのアーカイブ記事の偉人たちの回路を再度読もうとおもいました